産業機械・装置部品の試作開発では、機械カバーやフレーム、架台、ブラケット、ベース部品など、製缶加工に加えて機械加工が伴う部品を製作することが多々あります。
こちらでは、機械設計のエンジニアの方が知っておくべき、「製缶加工+切削加工」を用いた試作開発のポイントについて解説させていただきます。
① 取り代を決める
製缶+切削の加工では、製缶加工時に反りや溶接歪みが出るため、公差が必要な箇所に、切削加工で除去する分の取り代を付けて製缶加工を行ないます。
その際に、取り代を多く設定すると加工の取り代が増えてコストアップとなります。逆に、取り代が少なすぎると品質確保が困難になったり、製品ロスに繋がります。
製缶加工+切削加工を用いる試作品製作は、反り、溶接歪みを加味して最適な取り代の設定がポイントです。
② 開先の有無
製缶加工では、強度アップを図るために開先を取ります。開先溶接では、開先の取り方で溶接深さ・幅・接合面積を変更し強度を調整することが可能です。
フラット面に切削を入れる際、開先(C面45°)で突合せて溶接して加工すると強度が落ちません。開先(C面45°)が大きい程、より強度を確保できます。機械カバーやフレーム、ブラケットなど、機構的に強度が求められる場合には開先の設定がポイントとなります。
③ 溶接前加工による組みつけ精度
製缶品の切削加工には、溶接前加工と溶接後の仕上げ加工の2種類があります。
ポイントは溶接前に組みつけ精度を向上させる切削を行うことです。例えば、組み合わせる部品に位置決めピンを設けるなどです。
溶接前加工により、精度良く組みつけることができるため、結果として溶接後の仕上げ加工の生産性が向上します。
④ 溶接構造から全切削へ
一般的に切削で形状を作るよりも、溶接構造の方がコスト削減できると思われがちです。しかし、切削量が少ない形状や小物部品などは、溶接構造で手間をかけるより、全切削の方がコスト削減になる場合もあります。
試作物のサイズ・形状に応じて、溶接構造か全切削かいずれが良いか検討することがポイントです。
⑤ 溶接の脚長
溶接構造で溶接の脚長(溶接量)ですが、脚長を増やすと品物が変形したり、歪が大きく出てしまうため、あまり脚長を増やさない方がいいです。一般的に板厚の半分の脚長があれば強度的に問題ありません。
製缶加工が伴う試作品の設計では、こうした溶接の脚長に配慮した設計を行うこともポイントとなります。
⑥ 溶接の種類
溶接にはさまざまな種類がありますが、見た目や歪量がそれぞれ異なります。
例えば、アルゴン溶接は見た目が良く強度もありますが、歪やすいので仕上げ加工の取り代が増える傾向にあります。対して、半自動溶接の見た目は少し悪いですが、歪が少なくアルゴンより安価です。
試作物の用途・サイズ・形状に応じて、最適な溶接方法を選定することもポイントです。